2015年6月23日火曜日

大魔王春希さんの無意識のお手柄

前回の記事にかずさは怒ってたんじゃないかという話から続いて
翌朝、かずさが予鈴前に学校に来るという奇跡的な光景から
かずさが「……昨日」と話そうとしたところに雪菜を連れた依緒が大騒ぎ
おそらく「……昨日、何で弾くのをやめたんだ」と言いたいところだったのではないか。

さて、その雪菜の話というのは軽音楽同好会のボーカルはできないという話
そもそも春希に脈ありだったし、昨日即答で断られた訳でもないし、望み大に思えたが、
一晩考えるとその答えはNOになってしまった。
おそらく雪菜の異常な家族での取り決め等も考慮してのことだと思う。

「これからも…話しかけて、いいかな?」
「あと、それと…
これも図々しいお願いなんだけど」
「学園祭…一緒に回れない、かな?」


んなこと言うくらいならおまえ多少無理してでもボーカル引き受けろよ!
って思ってしまったのは私だけだろうか……

さて大魔王春希、次なる極悪な作戦に移る……
散々立てていた「色々気苦労も多い」「有名になりすぎても困るんだろ」といったフラグがここで回収される。
依緒と下校したシーンに映る三つ編みのスーパーの女の子こそ、小木曽雪菜だったのだ。

雪菜がバイトをしているのは峰城大附で優勝し、お嬢様イメージがついてしまい、見栄を張るために服を買ったりしておめかしをする内にお金がなくなってしまったからだという告白をする。
春希はもっと大変な事情があるものだと思っていたが、何とも言えない困った具合の打ち明け話をされて困惑する。

大魔王春希はスーパーでバイトをしていることで脅しにかけてボーカルに勧誘しようとしていたわけだが、そんなこと言えない雰囲気になってしまったし、たぶん結局春希はこういうことはできない人間なんだと思う。

ここで雪菜から南末次駅に10時に会おうという申し出が出る。

「本当のわたしはね…
今、あなたが思ってるようないい娘なんかじゃないの」

含みのある台詞を残して約束の時間へと飛ぶ。

さて、南末次駅のカラオケに入った二人、いきなり流れる曲は
水樹奈々の深愛
これはアニメWHITE ALBUMのOPということでシリーズに縁のある曲となっていてサントラにも雪菜版がフルで収録されている。
中の人である米澤円は相当歌が上手く聴き応えがあるので是非聴いてみてください。

WHITE ALBUMのイントロが流れる中、はじめましてのような自己紹介とボーカル棄権の撤回の宣言の後

「これにて、小木曽雪菜の秘密は、
一つもなくなってしまいました。
…あなたに全部知られてしまったから」

という台詞とともに歌い始める雪菜
雪菜屈指の名言というかこうプレイヤーの心を射抜く名台詞
今まで心を開いてくれなかったヒロインが自分だけに開いてくれたという承認された気分が画面の前のオタク達を虜にしたに違いない。
ここまではかずさは魅力的に描かれない分、雪菜にドはまりしてもらいたいところ
なんやかんや言ったけど春希に思いっきり感情移入して物語にのめり込もう。

さて、朝の学校での棄権とその撤回の間にあったイベントはバイト先に春希が突入だけだった。
ここで重要だったのは誰も気づかなかったバイト先の雪菜に春希が気づいたことだ。
「誰も見つけられなかった私を見つけてくれた」ということで春希が更に特別な存在に思え、
また春希が自分に関してまわりを気にして家族の為に一生懸命働く良い子だと勘違いしていることがむず痒く感じたのであろう。

春希はモノローグで

俺の努力が報われた訳じゃないけど。
たまたま、小木曽が優しくて、
歌うことが大好きだっただけだけど。

と語っているが、論理的に考えて雪菜が歌が大好きであることは前から変わらないわけだし、棄権を撤回したのは単に春希の努力の賜物なのだ。
偉いぞ春希、よくやった春希


翌日の第三音楽室、雪菜の入部に驚きを隠せない武也

「今日はピアノの人はおやすみ?」

という雪菜の台詞と共に節が区切れて今日はおしまい。

あーピアノの人?それまだわかってないんですよー
誰なんだろうな~ハハハハハハ

2015年6月6日土曜日

春希と雪菜の二度目の出会い

前回記事に書くのを忘れていたが、かずさのピアノ曲の曲名は
kapell様著「ホワイトアルバム2 ピアノ使用曲リスト・解説・考察」
から引用させてもらっています。

それと丸戸丸戸言ってますが、丸戸史明というのはWHITE ALBUM2のストーリーの原作者です。
ストッキングが大好きなおじさんです。

ではここから記事がスタート

文化祭体育館ステージのプログラムを組む春希

10:00 演劇部『雨月山の鬼』

にフフッとなる二周目だ。

…冬馬さん
あなた最近、ちょっと集中力に欠けるところがあるわね。
やっぱり普通…

という先生の説教台詞、かずさが強制中断しているが、この「普通…」というところ
あとあと重要になる設定の伏線である。

この時かずさは音読のページがわからないと言ったが、春希の番になるとこっそり教えてくれる。
もちろんかずさが授業など集中しているはずもないわけで、この時教科書を追っていたというのは
作業熱心なお隣さんの為と考えたいところ。

春希がかずさのことを気にかけている描写はもちろんあるが、その逆も散らしているのが
丸戸の上手いところだ。

さてこの場面転換の曲は
ドビュッシー『ベルガマスク組曲』第4曲『パスピエ』という曲だ。

ここに来て、新軽音楽同好会結成の一曲、「WHITE ALBUM」の合奏が始まる。
ピアノ君が乗っかってくれたところで上からなぜかボーカルの声が、
ここで春希は居ても立ってもいられず屋上へ飛び出す。

私はここでかずさの心情を考えたい。
かずさからすれば春希のギターに合わせて気持よく弾いていたWHITE ALBUMに
見ず知らずの女のボーカルが乗っかり、あろうことか弾き終わる前に春希がギターを投げ出してしまう。
かずさからすれば泥棒猫に春希を盗られた気分だったに違いない。

春希は鍵が締まっててピアニストを確認できないと言っていたが、本当に知りたければ
待ちぶせをすればすぐわかることであり、春希はそれをしなかった。
それなのに雪菜の方へはすぐに行ってしまったわけだからかずさが嫉妬の炎に抱かれていた
ことはほぼ間違いないだろう。

ここで堂々の名曲、堂々のOP

届かない恋

ここで軽音楽同好会のボーカルに雪菜を誘おうとする春希だが、
雪菜からコンテンストという単語を聞き、雪菜が元々目立つのを嫌がっていたことを
思い出し、一度声を掛けるのをやめようとしてしまう。

それでも雪菜をボーカルにすることを、軽音楽同好会として発表すること、
「秘密の計画」を実行することを諦められなかった春希は雪菜を誘ってしまう……



コラム「エロゲの世界を捉えるということ」

ここで少し本筋からそれた話をしたい。
ギャルゲーエロゲと言えば、主人公の声はついていないものが多い。
ギャルゲー経験の浅い人間の拙い考えであるが、主人公はあまり他人との関わりが上手くなかったり、何かしらに対して深い意欲のない、没個性気味のキャラクターが多いように思う。
もしかしたらこれはプレイヤーが感情移入しやすくするための配慮なのかもしれない。

しかし、2はどうだろう。
北原春希にはしっかりとボイスが付き、作中イラストとして顔がしっかり描かれることもあり、
皆に慕われる委員長キャラであり、好きな女の子を追いかけるそれはもう濃いキャラクターとして描かれている。

これではスッと感情移入することは難しく、「気づいたらヒロインが彼女のように思えた。」などということも私は感じることはなかった。
もちろん登場人物の立場に立って心情を捉えることはするが、それは主人公だからというわけではなく、すべてのキャラに同じくらい行っているものだから特別ではない。

何度もいうが主人公、北原春希は一人のキャラクターとして確実に独立した存在だ。

ここから私はこの作品を自己の投影としてプレイするのではなく、神様になって世界を俯瞰するようにプレイするのがより作者の求める方法なのかなと思った。

ちなみに丸戸の別のゲーム「世界で一番NGな恋」にも主人公の顔、声がついている。

もしかしたら丸戸の作品を決まった視点から見るのではなく作品全体の世界を感じて欲しいという演出から来るシステムなのかもしれない。

2015年6月4日木曜日

雪菜から見た春希の第一印象

さて初っ端の屋上のカットで流れる曲こそショパンの黒鍵
この黒鍵こそ冬馬かずさのテーマ曲である。
雪菜が白、かずさが黒という対比においてほとんど黒鍵しか使わない黒鍵というまんまのタイトルのこの曲こそと選ばれたのであろう。

ここからが本当のスタートで舞台は第一音楽室、主人公北原春希が所属する軽音楽同好会のバンドがサークラ女によって空中分解してしまったところから始まる。

春希くんは他人事のようにふざけた曲をギターでアドリブで弾いているがこれまあまあ上手くね?
春希くんギター下手なんでしょ!ねぇ!と問いたくなる気持ちは置いておいて軽音楽同好会部長であり、親友の飯塚武也が去った後には春希の「秘密の計画」の頓挫に嘆く。
ここで手癖で弾いていた曲になぜかピアノが合わさってフェードアウト……

ちなみにここの場面転換で流れる曲はショパンの可憐なる円舞曲である。

冬馬かずさが遅刻して登場
この時の春希くんの台詞、好きな女の子に日常会話を仕掛ける、甘酸っぱさが好き。

と思ったらもう雪菜登場
ミスコン三連覇に期待が掛かる雪菜からミスコン辞退の申し出

ついさっきの春希の

お前、俺の話聞いてたか?
今日の予想は明日には…

といい、雪菜の申し出の途中の

あ…

といい、もしかしたら春希は薄々感づいてたのかもしれない。
というのも実は春希はこの時に雪菜の"あの姿"を知っているからだ。

それに小木曽だって色々気苦労も多いようだし。
あまり有名になりすぎても困るんだろ

これが"あの姿"のフラグになっていることに気づく。
そしてこの後なぜか春希が担任教師にタメ口で話すという謎の台詞がある(余談)
春希のキャラクター的にあり得ない気がするからなんかのミスかなぁと勝手に思ってる。
ここで春希を頼る人間が生徒生徒生徒と来て教師と締めることで春希が学園中の人間に頼られているということを雪菜は知ることになる。
細かいところだが、こういう無意識に刷り込む演出が丸戸は上手いと思う。

ここで既に雪菜から見ると「皆に頼られる春希」「自分のわがままな申し出を通してくれる春希」という印象ができて、もう初恋の相手としては良いファーストインプレッションになっているのだ。

ここでそのミスコン棄権を急に撤回する雪菜
棄権するつもりが、春希という頼れる優しい人物に出会えてもっと関わりたいと思ったというのが理由だろうと考えている。


ここで場面転換して流れるのはラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」
武也が発表は無理だと諦める。
この前までは他人事のように茶化していた春希も「秘密の計画」の頓挫に焦ってしまう。

途中から春希がパヴァーヌに合わせるわけだが、好んでクラシックを聴く春希ではないはず。
おそらくピアノの奏者と春希のお決まりのナンバーだから必死に練習したのであろう。
と思ったけど、「いつの間にか合ってた」とかあり得ねぇから!w

ここで依緒ちゃんとの帰宅イベントに入るけど、背景にいる三つ編みのバイトは……
駅と反対方向に春希が来ていたあたり、誰かに会いに来ていたが、すぐ近くで依緒に会ってしまい今日は頓挫したとかどうとかだろうか。

雪菜の付き合いの悪さを伝える依緒、それに対する春希の

…だろうなぁ

もちろんこれも雪菜の"あの姿"を知ってのフラグである。

さて余談になるが、この水沢依緒というキャラクターの声優である中上育美さん
実は雪菜役でオーディションに出ていたらしい……

ここで節が区切れまして今日はここまでで

2015年6月2日火曜日

エピローグのエピローグ

今回から引用を多用するので引用部分は斜体表記する。

どうしてこうなるんだろう…
初めて、好きな人ができた。
一生ものの友達ができた。
嬉しい事が二つ重なって。
その二つの嬉しさが、
また、たくさんの嬉しさを連れてきてくれて
夢のように幸せな時間を手に入れたはずなのに…
なのに、どうして、こうなっちゃうんだろう…

というアニメーションからスタートする本作は既に
introductory chapter(以下ic)が悲しい結末に終わることを暗示している。

本作は時系列で言うとicの最後にあたる部分を少しだけ切り取った
所から話がはじまる。
抽象的ではあるが

三人から二人が抜けだしてしまった日
二人から一人が去り、
一人と一人が残されてしまった日

と物語の大筋が予想できる表現を使っている。

いつも、俺たちの分岐点に現れて、
辛いこと、哀しいことを覆い隠すように、
雪が、降り積もる。

と隠喩である雪の存在をガッツリ解説されているわけだが、
この通り、2では物語の核心部分で雪が降る表現がなされる。
この演出こそ本作が2ファンに雪をトラウマにする所以なのだ。

一度、最低の裏切りをしてしまった相手だから。
もう、ずっと最低を貫かなくちゃいけないから。

この春希の誠実を履き違えたエゴこそが2の人間事情を
より複雑にしていく。

雪は、覆い隠してくれる。
辛いこと、哀しいこと。
そして、見たくもない真実を。
ただ白く、綺麗なだけの世界を目の前に広げ、
俺たちを、そこに置き去りにしてくれる。
……
けれど所詮は雪は雪であり。
一度解けたら、そうやって隠していた事実を、
忘れていた想いを、もう一度白日の下にさらす。

さて、要所で雪が降るとは言ったが、春希は雪の降る日に決まって誰かを裏切り、最低のあるいは狂った行為に走ってしまう。
ただその後に待ち受けるのは厳しい現実のみである。
その物語の大筋とも言える部分が実はここにデカデカと書かれているのだ。
これこそ二周目で味わえる作者からのプレゼントである。

以下ネタバレ含む為反転

開始
特に私が思い出したのは最終章codaのかずさ浮気エンドだ。
これは春希が雪に目が眩む中、いつもは本能的なかずさだけが現実に気づくエンドで、春希が雪にどれだけ弱いかがわかる話であるとともにかずさの成長が見れて好きなエンドだった。
終了

ic自体が2のエピローグみたいなものだが、そのエピローグでこれだけ書くことがあった。
作者としても深い位置付けをしているものだから筆が進んだと信じたい。
というかこのテキスト量にこの分量で考察を乗っけては何千時間掛かるかわからない。



WHITE ALBUM2の世界

この記事を見ている時点でわたくししらほたがWHITE ALBUM2を激推ししていることはわかっていると思うが、そのWHITE ALBUM2の考察に入る前に少しだけ作品の紹介をさせて欲しい。

WHITE ALBUM2(以下2)というからにはもちろんWHITE ALBUM(以下無印)があるわけだが、
無印は1998年発売のボイスなしのエロゲで、残念ながら今は手に入らない。
その後2009年にアニメ化され、2010年にPS3でリメイクされ、水樹奈々と平野綾の声がついた無印が完成したのである。
そのPS3リメイクの同年に2の前半部分が発売し、翌年2011年に後半部分が発売し2が完結した。

ちなみに無印と2とでは同じ世界の話で同じ楽曲が出てくるものの登場人物はまったく違うし、時代も2が後になっているので無印をやらずに2から始めるというのも全然ありだし、私は2から始めることを勧める。

さて「WHITE ALBUM」というナンバリング作品にはある一貫したテーマがある。

それは  浮気 である。

それも主人公が複数の女性の間で揺れる浮気に限定されている。

この恋愛の一テーマである浮気を巡った男女の関係や心情の揺れ動き、またその周りの世界がどう関わってくるのかを巧みに表現した作品こそ2なのである。

恋愛とは多くの人間に取って人生単位で関わってくる大きな出来事だと思う。
恋愛観を考えるということはそれ即ち人生観を考えることとも言えるほどのことだと思う。

だからこの作品を通して、誰が正しく、誰が間違っていて、誰が善く、誰が悪いかなどの
ことを考えながらプレイしてみると深い味わいが出てくる作品だと思う。

最初は単純にストーリーを楽しんで、好きなキャラを愛でて終わりでも構わない。
でもその後、例えば通学、通勤時間にパッとシナリオを思案してみると
次から次へと心情やシナリオの深みがわかってくるものだ。

その部分に関してもこのブログで自分なりの意見をまとめていこうと思う。

少しだけと言いながら長文になってしまい、失礼
ここまで読んでくれてありがとうございました。

当ブログのご案内

まずは閲覧ありがとう

ブログの使い方はいろいろあると思う。
創作物の紹介だったり日記だったり何らかの考察だったり。
普段の些細なことはTwitterに綴ってしまうし、自慢できそうな出来事は顔本に日記として上げてしまう特に創作をしない私がブログを使うとなるとやはり考察になる。

Twitterでは文字制限が140字ときついのとまとめるのに向いてないということで、
記事のジャンル分けができて如何なる長文にもシステム上耐える(読者が耐えられるかは不明だが)ブログこそ考察や感想文にぴったりのインターネットツールなのだ。

さて、ここでどういう記事を書く予定かだけ書いていきたいと思う。
普段比較的長文になりやすいツイートを参考にリストアップしよう。


①WHITE ALBUM2をはじめとする創作物の考察、感想

②哲学ないしは自分の人生観


今のところ日記を書くつもりはないが、気が向いたら書くかもしれない。

①については自分向けにまとめておきたい気持ちがずっとあったので物好きな人は
  覗いて貰えたらいいなくらいの気持ち
②については自分向けにまとめるのもあるが、自分の考え方にまわりはどう考えるかを
  知ってみたいという気持ち
がある。

もちろんどちらの記事も見てもらいたいのではあるが、②の方がすべての人に対象を取って話せるので②だけでも見てもらえればと思う。

とはいえ、当面は①の中にあるWHITE ALBUM2に関する考察感想しか書く予定がないのでそこはよろしく

すべての記事においてコメントを期待しているので、何か思うことがあったらとにかくコメントが欲しい。はっきり形が残るのが嫌ならDMやリプでも構わないので待っています。